紅葉と黄葉 |
以下、国立博物館のホームページからの抜粋です。樹木の葉の細胞を顕微鏡で観察してみると、楕円形をした緑色の構造物が数多く含まれています。これを葉緑体といい光合成を行なうための細胞小器官です。葉緑体にはクロロフィルと呼ばれる光合成色素が含まれていて、光合成を行なうためにクロロフィルは光を吸収しますが、光の波長によって吸収の度合いが大きく異なります。わたしたちの目に見える光である可視光線の波長はおよそ350ナノメートルから800ナノメートルですが、このうち550ナノメートル付近の光はほとんどクロロフィルに吸収されません。その結果、わたしたちの目にはクロロフィルに利用されずに反射されて来た緑色の光だけが届き、葉を緑に見せているのです。
それでは何故、「紅葉」した葉は赤に、「黄葉」した葉は黄色に見えるのでしょうか?光合成の効率は十分な光が与えられている時には温度が25度程度で最も良く、また温度が低い場合にはたとえ十分な光があっても光合成効率は悪くなります。秋になり気温が低くまた日照時間が短くなると、温度も光も不十分なため光合成の効率は下がることになります。葉はそれ自体も養分を消費しているため、葉が生産する養分が消費する養分より少ない場合に葉を残すことは植物の生存にとって不利になります。また冬の空気は乾燥しているため、葉の表面から水分が蒸発することも問題です。秋の晴天によって紫外線が増加し、活性酸素が増大するというデメリットも生じて来ます。そこで落葉樹では秋になると、落葉の準備が始められます。通常クロロフィルは常に分解・再生産されることを繰り返していますが、再生産が抑制され分解だけが行なわれるようになります。その結果、緑色が薄くなり葉に含まれる他の色素の色が見えるようになります。黄色に見える「黄葉」は、葉の中にもともとクロロフィルと一緒に含まれていた「カロテノイド」という黄色の色素が見えて来ることで起こります。